犬と猫、という名前の椅子たちです。
TOMOEの流れを汲みつつ、軽快なアームチェアとしてデザインしています。同じ考えで開発が始まりそのまま2案が完成したので、何となく「仲間」のイメージでネーミングしました。
サイズ CANE w 535 d 535 h 785 sh 420
  GATTO w 535 d 535 h 785 sh 420
素材  ブナ ナラ
仕様 ウレタン塗装

自社工場を中国の大連に設立して、日本だけでなくアジア全体のマーケットを視野に入れた開発を展開しているメーカー。中国、香港、台湾、韓国に、すでに販売拠点やパートナーを持っているブランドです。
野田康彦社長は自社工場のみならず、協力工場探しのためなら単身でどこまでも乗り込む行動派で、「良いものには国籍はいらない」を座右の銘とし、価格と品質のバランスが良い商品開発に取り組んでいます。

http://www.ndstyle.jp

 

小振りなアームチェアをテーマにしてデザインをスタートしましたが、どうしても詳細を絞り込めないまま提案の日が近づきます。
結局2案をそのまま提案して、開発の現場で決めることにしました。
ところが、開発ミーティングの場でも意見が分かれてしまい、決定ができません。
こういうときはデザイナーの責任で「こちらにしましょう」というべきなのですが、このときばかりはこの期に及んでまだ振り切れない自分がいました。

そこで、2案とも試作できないかというわがままを言いました。
デザインの70%ぐらいは共通パーツなので、なんとかお願い!!
こんなこと、初めてです。

大連での試作確認の日、目の前にはしっかり二つの試作がならんでいました。が、試作を見てもまだ決めきれません。そもそも、どちらともに何かが足りない。
大連工場も私のやり方に随分慣れていただいているので、現場で大胆に変更できるようにパーツ試作も準備してくれていましたから、まずはそこに調整をかける段取りから始めます。
いつもは「手直し」調整ですが、この時は「手探り」調整。現場のアドリブでどんどん変えていきました。
そもそもこの作業はどちらかを選ぶための確認でしたが、やればやるほどどちらも面白くなってきます。これは良い展開なのか迷宮入りなのか不安はありましたが、大連でのワークショップも時間切れ。結局二つのアイテムを塗装も含めて仕上げてもらい最終確認は岐阜の本社にて行うことに。
その場で、シリーズとして2案とも製品化が決まりました。
こうして見ると、二つともに個性がありきちんと完成しています。予想外の展開(途中からは確信犯)でしたが、これもワークショップスタイルならでは開発の醍醐味ではないかと感じた成果でした。

2016年初夏のワークショップにて村澤さんから新しい椅子のデザイン提案がありました。デザインのベースは同じですが、2種類の図面。違う点は、前脚の形状だけです。

村澤さん自身もどちらか決めかねており、ワークショップで相談するつもりということでしたが、意見交換をして決を取ってもほぼ二分する評価でした。

「じゃあ、ふたつとも試作できませんか??」

村澤さんのこの一言。
1シリーズの開発だと思っていた私は内心びっくり。おそらく顔にも出ていたことでしょう。1シリーズだろうと2シリーズだろうと納期は変わりません。手汗びっしりの状態で快諾? してCANEとGATTOの開発はスタートしました。

1次試作のワークショップは、大連工場で行いました。
CANEもGATTOもオリジナルデザインの試作品をそれぞれ1台ずつと、調整用のフレームを1台ずつ試作してもらい検証を始めました。
毎度のことでわかってはいるのですが、平面やCGで見ていた物と現物では大きく印象が違います。オリジナルの試作を見ての個人的な感想としては、図面ではふたつのイメージは大きく違って見えたのですが、現物を見るとあまりふたつの差がないように感じました。
村澤さんも同じように感じていたらしく、調整用のフレームを使用して手直しが始まりました。

図面の段階から、前脚形状の違いによって、CANEは直線的でシャープな感じ、GATTOは曲線的で優しい感じの印象を持っていました。
その印象の差を大きく広げる試みが施されていきました。
まず、形状的な変更点としてサイドフレームの断面形状を双方とも変更しました。
オリジナルの断面形状は、四角で角に少し丸みを取ってあるだけでしたが、CANEは角度を取ってよりシャープに、GATTOは外側だけ丸みを大きくしてより優しい感じに持っていきました。
これだけでも印象がガラッと変わりましたが、村澤さんは満足していません。
さらに塗装色でも文字通り色を付けていきます。
CANEには白色に塗りつぶす塗装を施してより無機質なイメージに、GATTOには木目を引き立たせる塗装を施してより有機的なイメージに持っていきました。
断面形状と塗装の手直しで、CANEとGATTOは大きく変貌を遂げ全く違った印象を受けるようになり、ふたつともタイプの違う魅力を持った椅子になりました。
素早く対応してくれた大連工場には本当に助けられました。感謝です。

当初はどちらかひとつに絞るという流れだったはずが、いつの間にか両方ともに魅入られてしまい、まんまと村澤さんの思惑通りになってしまいました。
まさに「ムラサワマジック」という感じで、大変勉強になりました。